実例紹介

最後に宿曜占星術が当たらなかったケース、当たっていたケースとして少々実例をご紹介します。

宿曜占星術が当たらなかったケース

◆二十代、男性。【壁宿】。
手放しで全面的に「当たっている」と考えられる結果ではないようです。客観的に見ると「一途」「真面目」「挑戦意欲ありで口論しがち」等、あまり【壁宿】らしいとは言えない性格特徴のほうが目立っています。
(印象としてこの方は【觜宿】ではないかと感じました。調べて【壁宿】だったため少々違和感を覚えました。宿曜は内面へ影響を与えますので、なかなか外見上は判断がつきにくいものですが)

ホロスコープを調べたところ、ASC牡牛座の可能性が高い人です。太陽は牡羊座。
まだ二十代ということで内面的には【壁宿】の影響が強いはずで、他人より前に出て行くことを苦手としているかもしれません。また「人を支えたいという欲求がある反面で他人を信頼出来ない」、などの心理は密かにお持ちでしょう。

ただこの人の月星座は魚座の半ばです。魚座も10度過ぎですと、水瓶座の影響(※)が色濃いと思われる【壁宿】の解釈、「奇人」や「隠遁癖」、「冷静淡白・合理主義」などの解釈からは遠くなるのではないでしょうか。
全般的にはASCと太陽の影響が強いようですので、これからはいっそうASCの真面目さや一途さ、太陽の挑戦意欲や社交性の高さなどが前面に出て来るでしょう。今後の仕事ではそちらの特性を活かしたほうが成功出来そうです。

(※このページのみ読んでいる方へ、サイドメニュー「暦の選択」をご参照ください。宿曜盤の宮は西洋占星術での計算における月星座とは当然には合致しません)




◆三十代、女性。【危宿】。
【危宿】の解釈はとても当たっていますが、「最もその人らしい部分が書かれていない」という印象です。

ホロスコープを調べるとASCは蠍座。(または山羊座。誕生時刻の記憶曖昧)
ちょうど三十代ですので、月星座だけではなくASCの本質が出始める頃です。

そもそも蠍座(または山羊座)は女性星座であり男性星座の水瓶座とは馴染みにくいものです。
特に【危宿】の水瓶座的な淡白さと、女性星座の感情的な繊細さ・執着心・思い入れの強さとは相反するものがありますので性格鑑定の難しいケースだと思います。

誰彼構わず挑戦する癖のある【危宿】は、淡白さで救われています。飽きっぽいという欠点はまた「こだわらない」という長所でもあるのです。
ところが、【危宿】の短気が女性星座の執着心と結びつくとやっかいです。「こだわらない」長所が打ち消され、怒りの感情や挑戦欲を引きずってしまうということも考えられます。

月とASCが科学反応で毒を生まないように。
むしろ【危宿】の飽きっぽい特徴を重厚さのある女性星座で補っていけたら上手に生きていけると思います。
相反する二つの特徴がどのような効果を生むかは今後の本人の生き方次第となります。生き方の方向性を決める目的意識こそがポイントとなってきます。


宿曜占星術が当たっていたケース

◆五十代、男性。【斗宿】。
本人も「宿の解釈がとてもよく当たっている」と実感し、周囲の評価も同様である。ただ解釈の一部のみ当たっていないと首を傾げている。

この人の場合は五十歳を過ぎているため、必ずしも“前世の影響”ばかりを受けているとは考えにくいです。また確かに【斗宿】の性格をとてもストレートに体現しているようですが、斗宿にある「地味」という特徴は当てはまっていないとのこと。

ホロスコープを調べたところこの人のASCは射手座でした。月は山羊座。
【斗宿】は射手座の解釈を含む宿です。
彼の場合、ASCが射手座にあるため相乗的に射手座性格が増幅されたと考えられます。
「地味」という解釈のみ当てはまらないというのは、その部分が山羊座の解釈であることから、現在では月よりもASCの影響のほうが強く出ているということになります。

なお、この人の場合は太陽も射手座であり、射手座の影響を大きく受けるホロスコープです。山羊座と射手座との矛盾による違和感も、幼い頃はあったでしょうが成長するにつれて射手座に引っ張られたことでほとんど気にならないほどなくなっているようです。


◆例外として一人だけ有名人の話をすると、元サッカー日本代表の中田英寿氏。
彼のホロスコープは分かりやすいケースです。(ASCは分かりませんが宿との相乗効果で太陽の影響が大きく出ているようです)

司令塔として名を馳せた中田氏は代表的な【壁宿】としてよく宿曜本でも例に挙げられています。
この方も太陽が水瓶座にありますので、【壁宿】中の水瓶座的な要素が増幅されていく傾向があるはずです。
冷静で冷淡にも見え、エキセントリック、放浪癖ありなところはまさに水瓶座性格です。

ややデリケートな印象があるのは月が魚座に入っているからなのか、もしかしたらASCが女性星座なのかもしれませんが、今後も性格的には矛盾が少なく宿の特徴がストレートに出やすい人だろうと思います。





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宿曜占星術がとても当たっていると感じられる人のなかには、上のように月星座とASCがとても近い位置にある場合があります。
あるいは月とASCが女性星座/男性星座、地火風水などで矛盾がない場合も宿が当たっているという感覚が強くなるでしょう。
(女性星座/男性星座、地火風水:十二星座の分類法。たとえば牡牛座と乙女座は地の星座、など)

逆に、月とASCが星座分類で矛盾する場合は「はずれている」と違和感を覚えるのではないかと思います。

どちらの場合も、年齢が高くなればなるほどその傾向が強くなると考えられます。
月とASCが近い場合は宿が「増幅され」、矛盾している場合は「離れていく」わけです。
このことから、ホロスコープを読めばある程度は未来の生き方も推測出来ると考えられます。


今世の生き方によって性格が変化し、来世が決定される―― 私はそう考えていますが、果たしてその変化も自分で選択出来るものなのか?
もしかしたら変化そのものもホロスコープに描かれているのかもしれません。
運命は生きている時の意志で選ぶのか、それとも生まれる前に決定されているのか。
考え始めると止まらない哲学的テーマです。



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