何故このような相性が出来たのか

宿曜占星術の相性占いは何故にこのように過酷で、ギブ・アンド・テイクのない一方的で殺伐とした人間関係を描いているのでしょうか。

宿曜本にはこの理由について、たいてい「為政者の占いだから」と書かれているかと思います。
新参の家来を雇っていくかどうか決める際に「こいつは自分にとって利用価値あるかないか、自分を裏切らないか」などとあくまでも道具としての見方をして占っていたから、殺伐とした表現になってしまったと。

確かにそれもその通りだと思います。
中国という権謀術数の渦巻く社会では、占いは常に為政者のために利用されてきました。ですから宿曜が相手を道具として見て占うのは当然とも言えます。

しかし実は、その中国的な発想にはさらに大本となる思想があります。
それが≪陰陽五行思想≫です。


五行思想と宿曜占星術の関係

一般に、宿曜占星術は「インド由来の占星術だ」と思い込むあまり陰陽道と無関係だと考えられているかもしれません。

特に日本においては陰陽道と宿曜道が真っ向から対立し、喧嘩し合っていた歴史があるので、陰陽師さんも宿曜師さんも
「あちらさんとは全く関係がない」
と言い張ることでしょう。

しかし宿曜占星術の相性解釈を読んでいけば、陰陽五行の思想がベースとなっていることが分かります。

以下、五行思想について少し説明します。

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五行思想とは、中国古来の陰陽道に基づく思想です。
この世の全てのものは陰か陽の二種類に分けられ、さらに五つの気(五行)を持つとされます。

西洋哲学の「地・下・風・水」という四大元素と間違えてごちゃ混ぜにしている人をよく見かけますが、完全に別物なのでご注意を。
五行とは元素ではなく、「気」というエネルギーのような概念です。
【木】【火】【土】【金】【水】という名が充てられているものの、それらの物質そのものではありません。

五つの気、つまりエネルギーはそれぞれに生み出したり生み出されたり、使役したり抑え付けられたりという関係を持ちます。
生み出したり生み出されたりする気の関係を、「相生」と呼びます。
使役したり抑え付けたり(剋する、と言います)という気の関係を、「相剋」と呼びます。

・生み出し生み出される関係、「相生」は以下の通りとなります。

 木→火 火→土 土→金 金→水 水→木
 (木が火を生み、火が土を生み…)

・使役したり抑え付けられる関係、「相剋」は以下の通り。

 木→土 土→水 水→火 火→金 金→木
 (木が土を剋し、土が水を剋し…)

これを図にすると、「相生」がちょうどぐるっと円となり、「相剋」が五芒星を作ります。
五行図、参照

……さて、いかがでしょう。
五行思想が何かに似ていることにお気付きになられたでしょうか。

宿曜占星術の相性関係です。

これを見れば宿曜占星術の相性占いが、五行思想をもととして中国で作られたであろうことは一目瞭然です。

もちろん基本的な相性の良し悪しは西洋占星術のアスペクトの考え方:惑星同士の角度で占う考えをベースとして導き出しているだろうと思います。
たとえば、【業】・【胎】はおおよそ120度、最良の関係を示します。
60度(相性良し)は1グループ目の【危】と【成】でしょうか。
【壊】は1グループ目90度(やや悪い相性)、2グループ目180度?(悪い相性。でも計算上はお隣の【成・危】のほうが180度に近い)あたりのようです。
このように宿曜は相性を順に入れていくだけなので、【業】と【胎】の120度以外は計算上正確なものではありませんが、だいたいの角度で見当を付けると昔の人が西洋占星術を取り入れて相性の良し悪しを決定していったのが分かります。

 ⇒現実の鑑定で見たケース。西洋占星術との対応


こうして昔の人は相性の吉凶を決定しました。そこまでは西洋占星術がベースです。
その後、相性の解釈表現において五行の「相生」「相剋」思想を入れたと考えられます。

力を与え、与えられ。
力を与えたほうは衰退し、与えられたほうは栄え。
相手を使役して思いを遂げ、使役されて危害を及ぼされ。

要するに、「誰もが誰かに力を与える代わりに他から与えられ、誰かを利用している代わりに他から利用されている」というこの“お互い様”の発想こそ、東洋独自の五行発想なのです。一対一よりも集団を考えているわけです。

あくまでも一対一の関係のみに着目している西洋においては、このような集団相互関係的な発想は存在しません。
だから一対一で「ギブ・アンド・テイク」が強く要求されるのでしょう。
東洋の場合は「その人から返してもらえなかった分は他の人から返してもらえばいい」と考えるわけですね。それであまり相手に「テイク、テイク」としつこく言わない。(でもこの理屈を悪いほうに突き詰めると、誰かに盗み取られたら他の無実の人から盗んで補えばいいということにもなりかねません…。だから東洋思想も良いところはあると思いながら、私は基本的に西洋派ですね)

以上のことから、宿曜師の先生方がいくら「あちらさんとは関係ない」と言い張ったとしても東洋独自の陰陽アレンジが成されたことは明らかと言えます。

安壊の謎

それにしても残るのは【安壊】の謎です。

もし統計データによるものなら警戒すべき相性と言えますが、あくまでも西洋占星術的な観点だけから見るとそれほど恐れる必要はないと思います。

宿曜師の蔡美伽子先生は、【壊】を再生のための破壊と考えて、決して過剰に恐れるべきではないと仰っています。【安壊】には人生を転換する作用もあるとのことです。
蔡先生が仰ることに私も賛成で、人との出会いは魂レベルの過去の因縁を解消するためにあります。
たとえ不幸が起きたとしても、その時に過去の因縁が解消されたと考えられます。
(とは言え暴力や刃傷沙汰に発展しそうなら逃げたほうが良い。恐怖を経験し、被害者の気持ちを理解したというだけで今世の場合は良いのです)


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※2014/5/29一部修正